雑記帳

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TVアニメ「CUE!」17話感想

こんにちは。

16話の放送からライブだったりGWだったりがあったので1週間しか経っていない気が全然しないのですが、今週も感想を書いていきたいと思います。前回の記事はこちら↓

 

take-md.hatenablog.com

 

いや〜、17話、良かったですね…。単純にストーリー自体がアフレコ現場にフォーカスした堅実なものだったからというのも大きいですが、これまで(アニメでは)素性が不明だったレッスンコーチの桐香先生にも少しスポットが当たっていたことや、何より月居ほのか役の緒方佑奈さんの演技が良かったです。

今回は今までの記事と少し書き方を変えて時系列通りに振り返っていこうかなと思います。まず冒頭の「ブルームボール プラネットウォーズ編」2話のアフレコ現場では、ほのかはいつも通りそつなく収録を終えて失敗した利恵を気遣う言葉をかけるなど、ここまでで見せてきた優等生的な面が強調されていました。ところが、自分の演じるアヤメの台詞ばかりが並んでいる次回の台本を受け取ると、思わず弱音を吐いてしまいます。それを聞いた音響監督の斉田さんは「できないならやらなくていいんだぞ」と突き放すような一言を放ちますが、この発言の意図はおそらく彼が役者の自主性を重んじるタイプだからなのだろうと思います。例えば5話では当初の想定より感情を込めすぎていた陽菜と舞花の演技を(原作者の意向があったとは言え)採用していたり、10話では上手く求められる演技ができない舞花に対して具体的な指導ではなく会話の中からヒントを与えていたりという描写がありました。今回も、弱気な発言をしたほのかをあえて突き放したような発言をすることで、自ら演技プランを考えることを促したのかなと思います。もしくは単にプロとして仕事を受けているという立場にありながらそういう発言をしたことに対して純粋に憤っていたのかもしれません。

事務所に帰るとWindの面々が出演したアニメの配信をみんなで観るというイベントが発生しているのですが、これが今回のほのかとの対比で意外といい味を出しているんですよね。「てさぐれ!部活もの」を彷彿させるような役者のアドリブありきの作品にいつもと変わらないテンションで出演しているWindの面々を見てほのかがどう思ったかは知る由もありませんが、「これぐらい気楽にやれたらいいのに」ぐらいのことは思っていたんじゃないでしょうか。

いつも通りのテンションが求められるWindの面々に対し、ほのかは真剣に役と向き合わなければなりません。いつもより(8話では全く台詞がない回すらあったことが示されていました)圧倒的に多い出番へのプレッシャーに加え、斉田さんを怒らせてしまったのではないかという不安も相まってほのかはかなり気負ってしまいます。一見すると快活な印象が強いほのかですが、その実かなり繊細な面があるというのは彼女の性格において重要なポイントなので、そこを拾ってくれていたのは嬉しいです。何度練習しても思うような芝居ができないほのかは、「忘れ物をした」と嘘をついてまでレッスン室に戻り、一人居残り練習を始めます。一人で練習しているシーン、敢えて声を入れないことで本番での演技に説得力を持たせるのもそうですが、空のペットボトルが増えることで時間の経過を表現しているのなかなかいいですよね…。そうして練習しているうち、煮詰まって筋トレをしていたところに桐香先生が現れます。そもそもほのかが筋トレをする理由は幼少期に観た「サンダーウーマン」への憧れからなのですが、そのアニメ版の声を当てているのは他でもない桐香先生なんですよね。原作では桐香先生自身の口からサンダーウーマンの声を当てていたのは「唐木ユリ」、つまり「由良桐香」の芸名であることが明かされるのですが、アニメでは視聴者には分かるようになっていながらもほのかは最後まで知らないままになっていて、これはこれでいいなと思いました。それはさておき、ほのかは思うように演技ができない理由を「人前で弱音を吐いてみんなを心配させるなんて、明るくてムードメーカーな私の知っているアヤメと違う」と言っていますが、これは今のほのか自身と全く同じ状況なんですよね。ほのか本人はそれに気づいていない様子ですが、この場面でほのかの心配をしつつ帰りを待っている他のFlowerの面々を映すことでそれを強調しているのもいい表現だなと思いました。あと地味に一番心配しているのが普段飄々としている志穂というのもいいですよね…。それは8話でほのかに支えてもらった経験があるからという部分が大きいのかと思いますが、志穂もちゃんと仲間のことを気にかけているんだなということが感じられて嬉しいです。そして、桐香先生はアヤメとサンダーウーマンを重ね、「本当の強さは自分の弱さに向き合うことから生まれる。目に見えることだけにとらわれずにキャラクターと向き合いなさい」というアドバイスをしているのですが、この部分の演出がかなり良かったです。「自分の弱さに向き合うこと」について語っている部分では鏡に向かっている桐香先生、「自分の演じるキャラクターにしっかりと向き合ってみなさい」と言う部分でTV画面上のアヤメとほのかが向き合う構図になっていたり、台本の表紙に描かれているアヤメ、途中のイメージ映像で出てきたサンダーウーマン、鏡に向かう桐香先生が全て同じ腕組みをするポーズをしていたりと、とにかく演出が上手い印象がありました。結局ほのかはここで桐香先生のアドバイスの真意を理解できていないのですが、こうして視覚的に印象付けることで後々気づいた時の説得力を増していたように思います。「目に見えることだけにとらわれるな」というアドバイスをしているシーンで視覚的な演出をめちゃくちゃ入れてくるのも逆説的で面白かったです。

そして迎えたアフレコ当日、ほのかを心配してか桐香先生がスタジオに現れます。ここで「唐木さん」と呼びかけられることで、(先程詳細を書いてしまいましたが)桐香先生は声優としては別の名義で活動していたことが仄めかされているのが自然でいいなと思いました。仮に「由良桐香」のまま活動していたら流石にほのかが気づかないはずはないですからね。そして当のほのかはというと、テストでこれまでのアヤメのイメージを捨てられないままの芝居をし、斉田さんに「気持ちを掴み切れてないんじゃないか」と指摘されます。結局それでもほのかは演技を変えられず、やや腹を立てたような口調で斉田さんにNGをもらってしまいます。ここで追い詰められた(と言ったら言い過ぎかもしれませんが)ほのかは、ようやく自分とアヤメを重ね合わせることができました。それはこの場面で「怖い」と感じたほのか自身の弱さ、そしてレギュラー戦に臨む場面で「怖い」と感じるアヤメの弱さが共鳴したからなんでしょう。ここからは本当に緒方さんの演技に全てが込められていたように思います。強さの中に秘めた弱さ、ほのか自身とアヤメの境遇の共通点、そして台詞の内容と声優という仕事の重なり…そういうものがしっかりと伝わってくるいい演技でした。そこから共演者の心が動いたり、前後のシーンを録り直そうと提案されたりという流れが起こることに十分な説得力がありましたし、いい演技が出たらそれに負けないようにもっと作品を良くしようという現場のいい空気感も伝わってきてなかなか感動的でした。

そしてアフレコ終了後、ほのかの演技を口々に褒める共演者たちの空気感は本当に温かかったですし、特にAiRBLUEの同期たちにとっていい刺激だったことが描写されていました。同じスタートラインに立った仲間同士が切磋琢磨していくのがCUE!の魅力の一つなのは間違いないので、同期たちがただ感心して終わらなかったことも、先輩声優から褒められるという原作にはない描写があったことも良かったです。そしてアフレコの様子を見ていた桐香先生は「サンダーウーマンになれたわね」という伝言を残して消えていたのですが、その一言でほのかだけに伝わっているというのが粋な演出だなと思いました。「だから私は戦う。戦えない人の分まで!」というサンダーウーマンの台詞は、オーディションに受かったほのかの裏にはたくさん落ちた人がいて、その人たちの分も背負ってアフレコに臨むという声優ならではの状況とも重ねていたのかなと思います。結局ほのかが桐香先生とサンダーウーマンの関係に気付いたのか気づかなかったのかは最後まで明かされませんでしたが、視聴者の想像に任せる演出もこれまであまりなかったので新鮮でした。

さて、ここまでいつもと書き方を変えて時系列順に書いてみましたがいかがでしたでしょうか。普段は全体を振り返るように書いているのですが、結局書きたいことがまとまらないので時系列順に書いたほうが漏れがなくて個人的には良かったように思います。それにしても、2クール目序盤は割と不安がありましたが、15話以降原作のエピソードをうまく取り込んで面白くなっている印象があります。ある程度ストーリーの方向性が決まってきて、かつキャラクターの関係性も固まってきているので原作エピソードを出しやすいのかもしれません。どうやら次回も原作エピソード成分が多めのような予感がしているので結構楽しみにしています。それでは。

 

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