TVアニメ「CUE!」24話感想
こんにちは。
1月から2クールにわたって放送されたTVアニメもついに最終回を迎え、各話感想ブログも今回で最後になります。前回の記事はこちら↓
24話、なんだかんだでいい最終回だったな〜と思います。ここまでのストーリーではそれぞれが何かしらの仕事を得て、辛いことも楽しいことも仲間とぶつかったり協力したりしながら経験してきたという描写でした。今回はそれを踏まえつつも敢えて仕事のない様子を描いていて、僕が好きだったCUE!の原作ストーリーのエッセンスが詰まっていたような気がします。欲を言えばもう少しこの辺りの描写に2クール目丸ごと使うぐらいの勢いで尺を使って欲しかったなといったところですが、その辺りはまた別の記事で書こうかなと思っています。
まずAパートでは「仕事がない様子」をメインに置いていたのが今までとは大きく異なる部分だったかなと思います。もっとも序盤は皆そうでしたし、特にMoonは自分たちを「産廃」と自虐するほどに1クール目では仕事がなかった様子が描かれていましたが、それと大きく異なる点としては「アニメのアフレコやライブといった仕事を既にしているにも関わらず、また仕事のない状態になってしまっている」というところですね。声優、というか役者全般そうですが、基本的に不安定な仕事なので一度役が決まったからといって次の仕事があるとは限りません。一度名前のある役を貰えば次の仕事に繋がりやすいという部分はありますが、新人だろうとベテランだろうとオーディションで「その役にふさわしくない」と判断されてしまえば役、つまり仕事はもらえない訳で、時折ラジオ等で耳にする「声優は毎日が就活」という表現はその通りなんだろうなと思います。実際今回も利恵や陽菜がオーディションを受けていたり、それ以前に受けていたオーディションの結果はAiRBLUEからは誰も合格していなかったりと、落ちることの方が多いオーディションの現実を描いていました。ではアニメ化と出演が決まっている「プロジェクトHimmel」の方はどうかと言えばアフレコは1年後とまだまだ先で、(イベントなどは何回かあるでしょうが)それまではやはり仕事がない様子でした。この辺りも割とリアルなところで、アフレコまで1年とはいかないまでもある程度の期間が空くのは普通でしょうし、その間に他の仕事がなければやはり暇なんだと思います(ちなみにCUE!はアニメ化発表から放送まで1年2ヶ月、PVが出るまで10ヶ月弱だったのでアフレコまでは半年程度は空いていたと思います)。そんな中で新人声優たちの頭を過ぎるのは「果たして自分は『声優』と名乗れるのだろうか」という疑問です。バイトばかりに日々に「ずっとこうなのかな」と漏らす千紗、「仕事がなければただの学生」という現実を再確認するほのかの台詞はそれを象徴していて、「仕事をもらって声優人生をスタートさせた。でもその先は?」というテーマの原作「beautiful tomorrow」のストーリーを思い出しました(あまり大きな声では言えませんがネット上に転がってるので気になった方は読んでみて欲しいです)。前にも書きましたがこれはCUE!のテーマの一つで、声優という世界にゴールはなく、「声優になる」ということはあくまでスタートでしかない訳で、それぞれがどういう声優になっていくか、あるいは声優を辞めて別の人生を歩むかということは本人を含めて誰にも分からないし、そして一つとして同じ道はないことを表現していたように思います。それに関連して、千紗と莉子の会話の中では「年齢」が話題に挙がっていました。千紗はチーム内で最年長かつ唯一学生ではないという立場で、年下のチームメイトに囲まれ、過ぎていく時間に対してやや焦りのようなものを感じさせる発言をしていました。それに対して莉子は千紗よりさらに年上(千紗は18歳、莉子は21歳、時間経過を考えれば19歳と22歳かも)で、莉子はチーム内では最年長ではないながらも唯一学生ではないという立場(絢とまほろは大学生、美晴は院生)は千紗と似ている部分があります。最近は一時期に比べれば新人声優の低年齢化は落ち着いてきている印象がありますが、それでもやはり年齢が若いということは新人声優にとって明確な強みであることには変わりないと思っているので、年齢を気にする描写はリアルでいいなと思います。ちなみにこれも原作「カレイドスコープ」にあった要素で、その際は「オーディション落ちても次頑張ればいいじゃないすか」(うろ覚え)と言う舞花に対して「舞花の次の数と私の次の数、たぶん違うんだよね」と舞花より4歳上の莉子が言うシーンがあったんですよね。他にも追試だらけの舞花とそれに対して苦言を呈するほのかの間で学校、そして勉強が声優人生において重要かどうかで一悶着あったりという描写があったりと、今後の人生設計に繋がる部分についてしっかり扱っていたのが印象的でした。この辺りは他の作品ではあまり見られない部分でもあって、下は15歳、上は22歳という幅広い年齢でいろいろなバックグラウンドを持ったキャラクター達が一人一人「社会人」として声優という職業と向き合っていく姿が描かれているCUE!の良さをアニメでも表現してくれていたように思います。
それから「声優は孤独なもの」という真咲社長の発言と、それに対してのAiRBLUEという事務所の立ち位置についても書いておきたいと思います。この辺りの話は前にもどこかで書いた気がしますが、「声優は孤独なもの」というのは事実で、むしろ今までチーム単位で活動していたことの方がイレギュラーです。声優という仕事をしていく上では普通それぞれがオーディションを受けて、合格する人もいれば不合格な人もいて、ある作品では共演した仲間が次の日にはオーディションで同じ役を争うライバルになるかもしれないというような本当に個々人の世界です。宮原颯希さん(赤川千紗役)が「いかにも個人事業主って感じ」という表現をされていましたが、特に今の声優業界は少ない活躍のチャンスを非常に多くの声優たちが争っている状況で、それぞれが自分の仕事を得るために必死なんだろうなと思います。今回も最初に利恵と陽菜が受けていたオーディションは実はその二人が指名で呼ばれていて、他のメンバーはオーディションに参加することもできていない状況であることが描かれていました。同じ事務所の同期でも既に活躍のチャンスは平等ではないという状況は「声優は孤独なもの」ということを強調していたように思いますが、そんな中でも舞花から「応援したい」という言葉が出てきたのは、これまでの積み重ねがあったからであると同時に、AiRBLUEという事務所をこのような形で立ち上げた真咲社長の狙い通りなのかなと思います。立ち上げたばかりの事務所に実績も経験もない新人を16人も集めて寮まで用意するという冷静に考えるとめちゃくちゃな設定ですが、同じスタートラインに立って共同生活を送ってきたことで、孤独な声優という仕事をしていく中でも常にそばに仲間がいるという状況を作ることができています。真咲社長は「暗い道に踏み出す一歩目にほんの少し声をかけてくれる仲間がいたら人の可能性はどれだけ広がるか」ということを言っていますが、学校や会社ならば近い境遇の人が身近にいることが多いところ、先にも述べた通り声優は普通そうではないので、こうして同じ境遇の仲間がそばにいることはきっと心の支えになるんじゃないかなと思いますし、お互いにライバルとして切磋琢磨する効果もあると思います。それは家族や(声優以外の)友人ではできない役割でもあるので、たとえ進む道が違っても、一緒に仕事やレッスンをした経験や共同生活を営んでいることは他の事務所では得られない強みになっていくんだろうなと思います。
そしてBパート、AiRBLUE1周年ということでラジオ「向かい風をつかまえて」に16人全員が出演する特別回の様子が描かれていました。これは1年という節目(アニメ的には最終回)で16人それぞれの活動を振り返るという役割と同時に、直前に「声優とは何か」という疑問に対していろいろと話し合うWindの様子が描かれていて、それに対する「声を届けること」というアンサーでもあったと思います。そしてこの1年で16人が得たものに関しては陽菜の言葉に集約されていると思っていて、一括りに「新人声優」といってもそれぞれがデビューまでに歩んできた道は違って、もちろんそれぞれが感じてきたことや強みなんかも違っていて、そしてそんな仲間たちと一緒に生活してきたことによって自分にいい影響があったということですね。先ほども書きましたが、AiRBLUEという新人ばかりの、そして全寮制の特殊な事務所で共同生活を送り、お互いのいい部分も悪い部分も見てきて、こうしてお互いに影響し合うことで成長しているという姿が本当にAiRBLUEの、そしてCUE!という作品のコアの部分だと思います。そしてその個性を「色」と表現しているのが好きなところで、「私もみんなの光を受けて色々な色が混ざった光で」と話す陽菜の瞳に色々な色が映っている表現もグッときましたね。陽菜の瞳の色がグレーであることに対しては今まで特になんとも思っていなかったのですが、ここでそのキャラデザを活かしてくるとは思いませんでした。12話で「自信なんて全然なくて」と語っていた陽菜でしたが、あの色素の薄い感じのキャラクターデザインはそれを反映していたのかもしれないなと今になって思います。そしてそんなそれぞれの色を纏った16人の声優のタマゴは、自分たちの「声」で今までを振り返り、そして未来への希望と不安を語りつつも、今の自分たちに自信を持って「私たち『声優』です!」と言えるようになったんですよね。今までずっと、なんならこのラジオの冒頭の挨拶でさえ「声優のタマゴ」と自称していた新人声優たちは、1年という時間、そしてその中での活動を踏まえて、殻を破って「声優」と胸を張って言えるようになったと思うと胸が熱くなります。今回の「はじまりのおわり」というサブタイトルは「もう『タマゴ』じゃない」ということを端的に表現していたのかなと思います。
そして「色」という表現を使ってきた時点でそうだろうなと思っていたのですが、やはり今回の特殊EDは「ミライキャンバス」でした。22話では「マイサスティナー」を「合ってない」と言いましたが、今回はBパートの脚本をミライキャンバスの歌詞をベースに考えたんじゃないかなと思うほどにしっくりきましたね。
ミライキャンバスという曲は一言でまとめると「過去を肯定し、現在地を再確認し、期待と不安の詰まった未来へ繋げていく」という曲なので、アニメの最終回とも相性が良かったなと思います。直前で過去を振り返り、今この瞬間自分たちが「声優」であることを再確認し、そして少し先の未来の様子を描きながらこの曲を流すのはいい演出だなと思いました。「少し先の未来」と言ったのは、本編では高校生だった舞花が卒業していたりはするものの、基本的には今までと変わらない日常を送っている様子で、まだまだその先の未来が何色にでもなっていける段階が描写されていたからで、直近で言えば「蒼き谷のアルマ」のオーディション前の様子だったと思います。「蒼き谷のアルマ」は1話で陽菜が養成所の教材として使用していた作品であり、そして陽菜が声優を目指したきっかけでもあり、さらにAiRBLUEの真咲社長の主演作でもあるという、陽菜とAiRBLUEにとって特別な作品であることが描かれています。最後はその「蒼き谷のアルマ」のオーディションシーンで締められていますが、これも冒頭との対比になっていて、「ハムレット」の朗読レッスンや「ブルームボール」のオーディションでは最後まで手を挙げられなかった陽菜が今回は真っ先に手を挙げていたのが印象的でした。それは陽菜にとってこの作品が特別であるからというのと同時に、陽菜がこの1年で成長できたからに他なりません。もちろん他のメンバーもそれぞれ成長しているのですが、「蒼き谷のアルマ」という作品に対する陽菜の思い入れというのを1話から描いてきて、そして1話ではまだ「声優のタマゴ」ですらなかった陽菜が演じていた作品に今「声優」として声を吹き込むことができている、ということを踏まえると誰よりも成長の幅が大きいのが陽菜なのかなと思います。オーディションでの「誰にでも羽ばたける空がある」という台詞はおそらくこの作品を象徴する台詞であると同時に、声優を目指す陽菜にとって道標になるような言葉でもあっただろうなと思うので、最後の台詞がこれなのも締めとして良かったなと思います。
最終回にして今まで以上にまとまりのない文章になってしまったような気がしますが、書きたいことは一通り書けたかなと思います。途中いろいろと思うことはありましたが、最終回でしっかりとまとめてくれていたなと思います。改めて振り返ると色々な気づきがあったのでその辺りも書こうかと思ったのですが、既に5000字を超えていてとんでもなく長く、そしてさらにまとまりのない文章になってしまいそうだったのでまた別の記事で書こうかなと思います。
改めて6ヶ月に及ぶTVアニメ「CUE!」全24話完走お疲れ様でした。こんなご時世の中一度も放送スケジュールが崩れることなく2クール放送できたのはすごいことだと思います。そしてこの感想ブログに付き合ってくださった方、拙い文章で申し訳ありませんでしたが読んでくれてありがとうございました。また振り返り記事を別で書くと思いますが、各話感想ブログはこれで最後になります。何かと飽きっぽい自分が一人でここまで何かを続けてこられたのはここ数年で初めてで、それだけCUE!という作品には思い入れがあります。アニメは終わってしまいましたが、今後の展開がどうなるかを含めてまだまだCUE!を楽しんでいきたいと思います。それでは。