雑記帳

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TVアニメ「CUE!」12話感想

こんにちは。

2クールの「CUE!」もついに12話ということで、もう半分終わってしまったのか…という気持ちとまだ半分もあるなという気持ちが同居しています。前回の記事はこちら↓

 

take-md.hatenablog.com

 

12話、めちゃくちゃ良かったですね…。ここまでの話をまとめつつ、同時に陽菜にフィーチャーして、本作のテーマである「声優のタマゴ」というサブタイトルで締めた1クール目の最終回を飾るにふさわしい回だったと思います。詳しくは後で書きますが、原作ファンというかこのコンテンツをアニメ化前から追っていた身としては特殊EDの「さよならレディーメイド」がアニメ制作チームの原作リスペクトを感じられて本当に嬉しかったですね。

今回は1クール目のストーリーの軸となっていた「花爛漫!ブルームボール」のアフレコがついに最終回を迎え、そんな中で陽菜が声優として新たな一歩を踏み出すことができた回でした。最終回にして初めて陽菜は「梅ノ木モモミ」という名前のある役を担当することになった訳ですが、5話を観ていればわかる通り、「ブルームボール」1話で登場した「生徒A」に名前がついたキャラクターで、新キャラという訳ではないんですよね。そのことは陽菜(というか出演キャスト)には知らされていなかったので、読者と同じタイミングで梅ノ木モモミというキャラクターを知ることになるのですが、これが明かされるタイミングがとても絶妙で、「ブルームボール」1話の放送直前なんですよね。要するに、原作で名前のなかったモモミをいきなりアニメに登場させると視聴者が困惑してしまうので、スピンオフという形でモモミというキャラクターをアニメ放送前に示しておくことができた訳です。一般にアニメ化においては尺の都合で過去絡みのエピソードやキャラクターはカットされることが多い印象ですが、「ブルームボール」はその逆で、原作では名前すらなかったモモミに名前とキャラデザをつけて登場させ、アニメと並行して連載されるスピンオフ漫画でツバキとモモミの過去を描くことで後半のツバキの心情描写(舞花が苦労していた辺りですね)に深みを持たせるということをやっていて、いいメディアミックス展開だな…とフィクションなのに感心してしまいました。そして、何より原作者の頭の中にしかいなかったモモミというキャラクターがこうして世に出たのは陽菜が声を当てたからなんですよね。ちょっと話が出来過ぎでは?と思った方もいたと思いますが、先日杉田智和さんがCUE!の第8話同時視聴会というのをYouTubeでされていたのですが、その中で「実際にそういうことはある」ということを冗談交じりに仰っていたので、実際にあることなんだと思います。

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陽菜にとっては初めての名前のある役、しかもそれが自分の声をきっかけに生まれたキャラクターであるというのは本当に嬉しいことだったと思います。少しメタな話をすると、モブ役だったとしてもエンドクレジットに名前は載るのですが、「生徒A」として載るのと「梅ノ木モモミ」として載るのとでは全然意味が違ってくると思うんですよね。いちオタクとしての意見ですが、既に名前のあるキャラクターを担当した実績があった上でモブとして出演しているの方を発見した時は「おっ」と思いますが、全然知らない方がモブとして出演されていてもまず印象に残らないので、やはり名前があるとないとではその後の仕事に繋がるかどうかという意味でも全然違うと思います。

そしてアフレコ後の陽菜と原作の無量坂先生のやりとりは本当にグッとくるものがありました。陽菜はアフレコの休憩時間に自分の「夢」について語っていましたが、毎週アフレコに参加することはできていたものの、番レギとして目の前の役と台詞に精一杯でそのことを忘れかけていたと言っていました。そして、一緒にアフレコに参加する同期たちの姿を見て自分だけ遅れているような気がしていた、不安で逃げ出したくなることもあった中で、こうして初めて名前のあるキャラクターを演じることができたことで、ようやく声優としてのスタートラインから一歩を踏み出すことができたんですよね。無量坂先生としては、陽菜が声を当てていなかったらモモミというキャラクターを世に出すことはなかっただろうから陽菜に対して「ありがとう」で、陽菜としては無量坂先生がモモミというキャラクターを生み出していなければただのモブで終わっていたから先生に対して「ありがとう」なんですよね。僕は一般人なので当然そういう経験はありませんが、原作者から「ありがとう」と言われるというのは本当に役者冥利に尽きるんだろうなと思いますし、特に自分に自信がなかった陽菜にとってはこうして自分の「声」を必要とされるという経験は人生においても大きな転換点となったんだろうなとも思います。ラジオ「超!CUE!&A」で陽菜役の内山悠里菜さんも「自分と重なるところがある」と仰っていましたが、声優という世界は努力が必ずしも報われる訳でも年功序列でもないので、近しい人が活躍している姿を間近で見ると焦り、妬み、劣等感などを感じることは誰にでもあると思うんですよね。もっとも陽菜はモブといえども毎週アフレコに参加できているだけ恵まれている方ではあるのですが、すぐ隣で準主役級の役を演じている舞花、そうでないにせよ名前のあるレギュラーキャラを演じている志穂やほのかと一緒に過ごしている以上、自分だけ名前のないキャラばかり演じているのには色々と思うところがあったんでしょう。そういうことを考えると、この場面の陽菜の涙には色々な感情がこもっていたんだなと思いますし、それを表現する内山さんの泣きの演技も初めてとは思えないぐらい良いものでした。

無事アフレコが終了した「ブルームボール」は、いよいよ第1話の放送を迎えます。自分達はオーディションに落ちた中でも仲間の活躍を祝って一緒に鑑賞会に参加してくれるAiRBLUEの同期たちは心が広いなといった感じですが、事務所に所属して間もないことを考えるとまだそこまで焦りがないのかなと思いました。もう少し時間が経ってくると仕事のありなしで明暗が分かれたりしてくるのでこうもいかないとは思いますが、おそらく現実の新人声優たちも最初の方は同期とこういうことをやっているんじゃないかな…と勝手に想像しています。好きな作品がアニメ化してキャラクター達が動いている様子を見るとただのファンである自分も感動してしまうので、アフレコした時点ではラフやコンテだった映像に色がつき、動画になって自分達の声が乗っている様子は声優という仕事をしていたらさぞ感動的だろうなと思います。そして、件のモモミとツバキのシーンは大幅にコンテから修正されており、モモミの表情がしっかりと表現されているカットに変更されていて、陽菜の声が作品に与えた影響が視覚的にも描写されていたのが良かったですね。ここのモモミの表情はEDの陽菜の表情とおそらくリンクさせていて(画像参照)、陽菜がモモミというキャラクターを形成したことを表しているんじゃないかなと思いました。

 

ここからは本編から若干逸れますが、12話の特殊ED「さよならレディーメイド」は本当にここで流れて良かったなと思いました。

「声優デビュー」をどのタイミングとするかは諸説ありますが、個人的には「声が初めてキャラクターの声として世に出た瞬間」だと思っているので、この「ブルームボール」1話が放送された瞬間が陽菜、舞花、志穂、ほのかにとっての声優デビューの瞬間なんですよね。で、この「さよならレディーメイド」は始まりの歌だと思っていて、サビの歌詞を引用すると

紡ぐ 紡ぐ 紡ぐよ

一歩ずつが 知らない色のフレーズ

胸に響く

溢れ 溢れ 溢れそう

愛しさ震える

それはかけがえないものだから

迷うことはない

そう ここから始めるの

となっていて、声優デビューの瞬間を迎えた4人に相応しい歌詞ですし、原作アプリの方でもエンディングテーマになっているんですよね。アニメに出演することはゴールじゃなくてスタートであるということを、この曲をゲームの、そしてアニメ1クール目最後のエンディングテーマに選ぶことで端的に表しているように思いました。

さらに、今週TV放送もされますが昨年に開催されたライブ「CUE! 2nd Party 『Sing about everything』」の最初の曲も「さよならレディーメイド」であるばかりか、アニメではその直前に流れたツバキとモモミのシーンのBGMのオルゴールもライブのオープニングに使われており、まさかここで繋がるとは思いませんでした。

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2nd Partyは原作アプリのサービスが停止している間に開催されていて、その間にあったことをライブの中で「陽菜とAiRBLUEのみんなからの手紙」として伝えるというテーマで構成されていました。その冒頭が今回の12話とシンクロしているということは、アプリとアニメで時空が違うとはいえ、手紙の中での「伝えたいこと」というのはアニメ1クール目の内容と考えられます。これに気づいた時は本当に興奮しましたし、アニメのシナリオが単なるメインストーリーの焼き直しじゃなくて良かったなと思いました。本当にCUE!というコンテンツは2次元と3次元を繋げるのが上手いというか、基本2次元の中で進むストーリーの中に3次元でのライブイベントを織り込むのが上手いんですよね。ライブを観なくてもちゃんとストーリーは成立する一方、ライブは本編のスピンオフ的な立ち位置になっていて、2次元と3次元の境界をあまり感じないように演出されているのが素晴らしいです。この辺りは2nd Party参加直後の記事に書いているので良かったら読んでもらえると嬉しいです。

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今回は1クール目最後の回ということで、書きたいことが溢れてきてしまい、いつも以上にまとまりのない文章になってしまいました。アフレコがひと段落したことで全体のストーリーも一旦まとまった印象でしたが、4月からはすぐに2クール目が始まるということで、ここからの展開がどうなるのか楽しみにしています。1クール目ではあまり出番の多くなかったWindとMoonが中心になると思いますが、公開されたPVを観ると原作アプリの印象的なエピソードも織り交ぜられているようで、あの感動がもう一度味わえるかもしれないと期待しています。1クール目を観た感じでは個人の掘り下げがちょっと物足りない印象もありましたが、その辺りはアプリの方に任せて全体のストーリーを優先したのかなと思うので、アニメの放送が終わる頃にはアプリが再開するのかなと勝手に想像しています。まだまだ続くアニメもコンテンツ全体の展開も楽しみなので、これからもCUE!を楽しんでいきたいと思います。それでは。

 

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